ドビュッシー:交響詩「海」 (CD)

いつものラトルらしく細部への拘りが半端ではない。

弱音の美しさは特筆もので、ベルリン・フィルの抜群の演奏力を生かして、集中力の高い音楽を展開している。

ただ響きは落ち着いていて、フランスのオーケストラが出す音とは明らかに違っている。

多分管楽器など、使っている楽器が違っているので渋い音色になってしまうのだろう。

もちろんドイツ風のゴツゴツした響きではなく、とても洗練されていて、低音に厚みを持たせたワールド・ワイドなオーケストラの音だ。

細部への強い拘りの一方で力強さ、スケールの大きさも比類がない。

「海」の第2楽章など静かな部分の立体感も十分感じられ、味わい豊かな音楽が聴かれる。

第3楽章の冒頭のコントラバスは響きが渋くて昔が太いせいか、なんとなくワーグナ一風に響いていた。

素晴らしい演奏だが、新しいドビュッシー像を確立するというか、ラトルにしかできないドビュッシーを聴かせるといった意気込みは感じられない。

スーパ一・オケを使って正攻法のドビュッシーを聴かせてるって感じで、ちょっと真面目というか、慎重というか、聴いていて安心だけど、あまり踏み外しのないやり方に思えた。