イン・ザ・ブラッド (文春文庫) (文庫)

モビール市警察刑事の<僕>、ことカーソン・ライダーが主人公の「精神病理・社会病理捜査班(PSIT)シリーズ」も、今作で早くも第5作目となります。

あまりに奇想天外なメイントリックばかりが目立った第1作「百番目の男」から一転、第2作目「デス・コレクターズ」で、伏線の妙と緻密な構成で、本格ミステリの旗手として、脚光を浴び、以後、次々と読者を満足させる作品を生み出してきた本シリーズ、今回は、奇抜な設定の兄、ジェレミーが全く作品に関与していない点で、前作までと様相は異なります。

冒頭は、若い男女が海辺の家で襲われるシーン。

その思わせぶりな書き方から、ミステリの定石として、意外な結末につながっていくだろう、と誰でも考えるのでしょうが、「何が起きているのか」全く分からず、興味を惹きます。

そして、次のシーンでは<僕>、カーソン・ライダー刑事が、相棒のハリーと釣りを楽しんでいる最中に、小舟に乗って運ばれてきた赤ん坊を発見。

これは一体何者?そうこうするうち、怪しげな宗教家や、人種差別主義者とそれに対抗する反差別団体が登場する中で、次々と起こる怪事件、一体「裏」で何が起きているのか?さらに、時折、三人称で差し挟まれる科学者の行動も意味ありげ…。

一体、これら、一見バラバラに起きている出来事が、どのように収斂していくのか、その興味で、読者はページを繰る手が止まらなくなることでしょう。

シリーズものは、第1作から、というのが一般的ですが、今作については、前4作を読んだことのない方でも全く問題なく楽しめます。

一番にオススメするのが、「本格もの」が好きな方です。

「伏線の妙」と「緻密な構成」に、感心させられる作品に仕上がっていると思います。

もし、本作品を気に入ったなら、これまでの4作も読んでみてください。

全く別々の趣向で、楽しませてくれる良作揃いです。