近代の通貨の歴史と役割を振り返り、今後の基軸通貨の行方と、円相場の方向性、そして通貨は国際的に今後どのようになってゆくのかについて、大胆に予想した本。著者は、元エコノミストで大学教授。簡単に読める本だ。特徴は2つある。ひとつは、通貨の歴史やそこから浮かび上がる時代時代の通貨の役割や位置づけの変化についてコンパクトに説明していること。通貨を今の使われ方だけにとらわれずにもっと自由に発想してもいる。地方通貨にまで言及しているくらいだ。2つめ特徴として、1ドル=50円台という衝撃の円高の時代を予想していることである。ワーグナーの楽劇『ニーベリングの指輪』のあらすじに例えていたりしてわかりやすい。基軸通貨は価値と流動性の相反する2つを保持しなければならないという点で流動性のジレンマを抱える宿命にあるとのこと。また、いわゆるリーマンショックにおけるバーナンキFRB議長のなんでもあり政策への評価は冷徹である。円キャリートレードを引き合いに出しながら、円を「裏基軸通貨」と言っている点も印象に残る。円相場については、藤巻健史氏の『マネー避難 危険な銀行預金から撤退せよ!』と正反対の予想をしている。どちらが正しいというより、視点が違う。藤巻氏は日本の財政赤字の巨額さによる日本国債の償還危機が円暴落の引き金になる可能性に着目している。一方、浜氏は、オバマの輸出倍増計画+ドル安政策に加え、日本が巨大な債権国になっていることを根拠として円が50円になってもおかしくないとしている。ユーロは域内格差から生じる矛盾を抱えている。その点から著者は、ヨーロッパは統合ではなく共生を目指すべきとしている。中国も基軸通貨を目指すような台所事情ではない。そして、今やドルは基軸通貨であることを事実上放棄しつつあるという。最終的に、著者は世界共通通貨という概念を提唱している。通貨という概念を、歴史を紐解きながら通常考えられているよりも柔軟に考え発想しているという点で、面白い本である。