東京JAZZ10周年記念のライヴ録音です。冒頭のピアソラの代表曲「リベルタンゴ」は絶品でした。情熱的ですし、白熱の演奏に相応しい心意気が伝わってきます。終わってからの観客の拍手と歓声はリスナーと同調していました。ピアソラの「鮫」を初めて聴きました。このように表現したいという寺井尚子の強い意志を感じます。演奏者として円熟味を増しながら挑戦者とでもいうべき攻めの姿勢が伝わってきました。彼女のイメージよりずっと感情が前面にでる演奏でした。「世界No.1アコーディオン&バンドネオン奏者・リシャール・ガリアーノ」に触発されたのでしょうか、情熱的な彼女の演奏スタイルを心地よく受け止めています。ガリアーノ作曲「オパール・コンチェルト」での随所に見受けられる即興演奏パートがあるからこそ、演奏が締まり、聴衆が引き込まれていくのでしょう。第2楽章の冒頭はまさしくパリの雰囲気が伝わってきます。第3楽章での弦のアンサンブル・パートの突き刺さるような音色が曲全体を引き締めていました。ガリアーノ作曲「メロディセリ」でのどこか寂しそうで美しく深い音色にキャリアの豊かさを感じました。ガリアーノとの共演が彼女の音楽表現にまた新しい要素を加えたようです。良い曲、良い演奏でした。「フ・レア」冒頭のアコーディオンの技巧的な箇所が素晴らしいものでした。アコーディオンとヴァリオリンのデュオですが、速いテンポでも乱れることなく、快調に飛ばしていました。アルゼンチン・タンゴの代表とも言える「ラ・クンパルシータ」を、タンゴのリズムを生かしながらジャズ風に再現していました。リーフレットには藤本史昭氏の寺井尚子の紹介や全曲の詳しい解説が掲載してあり、この熱演の素晴らしさを文章からも理解できるように書かれていました。