罪と罰のクロスロード (単行本)

日本の現行刑事法は「刑法は大陸法、刑事訴訟法は英米法」とよく言われますが、刑法もドイツ法の影響だけでなく、「フランス法、イギリス法をはじめ、ロシア法やハンガリー法なども参照されて制定されている」(23頁)し、刑事訴訟法も「最も影響を受けたのは、アメリカ法である。

しかし、刑事訴訟法学においては、必ずしもアメリカ法一辺倒ではない。

むしろ、刑事訴訟法学者の中には、ドイツ刑事訴訟法の研究者は多い」(同)というのが現状です。

本書は、それをふまえて、日本法の源流ともいうべき、大陸法と英米法のさまざまなトピックスを織り込み、具体的には、イギリス刑事手続きにおけるイングランドと北アイルランド、スコットランドの比較、ヨーロッパでの調査や学会での体験記、1992年に起きた日本人留学生服部君射殺事件をめぐるアメリカ刑法の考察、沖縄での米兵犯罪をめぐる問題など、刑法、刑事訴訟法に関する史的、文化的、比較法的考察が分かりやすく書かれています。

また、沖縄での米兵による犯罪に際し、起訴以後でないと米軍から身柄を引き渡してもらえない現状に対して非を唱える一方、国際的には、日本の拘置所における長期の取調べも問題であるとし、それが是正されない限り、日本の主張は認められないだろうとしています。

内容的に実に興味深いものですが、それ以上に興味深いのが、著者自身です。

巻末の著者紹介には、「親は…いわゆる花柳界の真っただ中で商売をし、小学生時代から芸者さんなどの生活を見て育った。

中学時代の友人には暴力団の組長の息子もいたし、芸者置屋の娘もいた。

…世間一般にいえば、そうしたはなはだ悪い環境が、社会について、あるいは法律について考える芽を著者に育てた。

…」とあります。

こういう経歴の人は、法学の世界には珍しいのではないでしょうか。

ぜひ、著者の生い立ちを本にしていただきたいと思います。