新編 銀河鉄道の夜 (新潮文庫) (文庫)

「銀河鉄道の夜」は、宮沢賢治の他作同様に生前未発表で、どれを決定稿とするか長年定まらなかった作品で、例えば新潮、角川、岩波版は1990年代まで全て異なっていました。

今日の研究では、本人が処分したり、死後空襲で焼失したりして、部分的に失われた原稿を含め、第一稿から第四稿までがあったと考えられています。

この新潮文庫版は、筑摩書房1980年刊行『新修宮沢賢治全集』を底本とし、最終稿と考えられる第四稿に基づく版です。

文庫のうちで一番最近の研究に基づく版であり、まず買うのであれば、この新潮文庫版をおすすめします。

ただしこの第四稿では、第三稿まであった「ブルカニロ博士」の重要なエピソードがなくなっています。

岩波版は古いですが、第四稿と第三稿の折衷的な編集で、博士が登場します。

新潮文庫だと『ポラーノの広場』に第三稿が収録されています。

現存する全ての原稿は、ちくま文庫版『宮沢賢治全集 (7)』 に掲載されているので、全て読んで比べてみたい方にはこちらをおすすめします(旧仮名遣い・新漢字版で、その他の作品の異稿も多数収録されています)。

青空文庫にもこの新潮版、角川の旧版(第三稿をもとにした本)と、両者の対照表が掲載されているので、さらに興味を持った方はこちらも併読してみるとよいでしょう。

賢治がブルカニロ博士を通して言いたかったことも、知っていた方がよいです。

ちなみに、ますむらひろしは漫画版 で、旧版と新版二通りの「銀河鉄道の夜」を描いています。

以上、各版について基本的なことを。

感想は皆さんにお譲りします。

追記 2011.7角川文庫版は1996年の改版で筑摩1980年全集を採用し、今日刊行されているものは第四稿が採用されています。

依然として旧版なのは、今日では岩波文庫のみとなりました。

また集英社文庫、岩波少年文庫なども第四稿を用いており、かつて主流だったブルカニロ博士版は今日では珍しくなりつつあるようです。

時代の流れでしょうか。