日本国憲法 (単行本(ソフトカバー))

 憲法は補則を含め、103条まであるが、本書は、1〜8条に記される天皇(特に天皇象徴制)と、9条の戦争の放棄にテーマを定め、そこに特化した2つの章から構成されている。

 天皇に対するメディアの腰の引けは異常とも思え、天皇を様々な自由と共に基本的人権を剥奪された、1個人として見る視点すらも死語となった不敬とされ、メディアにのることはない。

 森は、象徴としての天皇に対する自身の「妄想」を、天皇を撮る事で、ドキュメントとして表現しようとする。

 この試みは、前述のような自粛する媒体としてのTV映像としては、当然ながら番組化することなく撮った映像はお蔵入りすることになり、その過程を前半で記している。

 後半では、9条条文の矛盾、過去の戦争やグラウンドゼロから、“9条の精神”を探る。

 私は、内田樹を引用した、自衛隊という軍隊を既に持っているのだから、それを改憲して明文化しなければ、矛盾が生じているのだから、それを単純化し、分かりやすくするために「武装国家」か「非武装中立国家」かの2者択一しかないとの論点は、「子どもの論理」だ、との1文や、著者の友人である漫談師見習いに語らせた、自衛隊をあんまん、軍隊を豚まんと比喩表現しての自民党新憲法草案批判に頷いた。

 ’95年のオウムや阪神大震災以降、アメリカのように日本も何か目に見えない恐怖に怯えて暮らすようになり、その怯えに軍事力で対抗しようとする気運が高まった。

 その恐怖に打ち勝ったかのように見えるアメリカでさえ、その怯えは克服しきれないのだから、怯えなくともよいような外交や、リスクはゼロまで解消できるはずはないと悟り、怯えとの共存を覚悟できる思想を、読者は本書で探るだろう。