鉄腕アトム(9) (手塚治虫文庫全集 BT 9) (文庫)

『鉄腕アトム』は、手塚先生の名声を決定的にした今でも人気が衰えない作品です。

それに加えて、人類の文化遺産に加えておいて欲しい歴史的な名作であると思います。

第9巻で、おまけとして『鉄腕アトムの生い立ちと歴史』があとがきに付されています。

ロボットという呼称は、アメリカのSF作家、アイザック・アシモフが考案したものですが、ロボットが存在する世界を描き出したのは、『鉄腕アトム』であることが読み取れます。

地球上において、ロボットという存在を世に広めたのは、アトムであったと思います。

『鉄腕アトム』は、昭和26年の『アトム大使』が最初のエピソードです。

ここでのアトムは、アシモフの描いたような、人間の召使のような描き方をされています。

そこから、人間と同じように動き回れる私達が知っているアトムにキャラ変更されますが、舞台設定の未来が、連載中に現実化するという真に奇妙な出来事が起きてきます。

現代の都市デザインが、手塚治虫の描いた未来都市に酷似している、とよく言われます。

真空管で動いていたアトムは、次第にトランジスタ、ITに変更をしなければならなくなりましたし、TVやハイウェー、超音速旅客機、月探検ロケットなど、空想として描かれたものが実際に起こり、それにあわせて書き直しをしなければならないことがあったそうです。

これなどは、新しい感性で次の時代を切り開いてゆく芸術家の仕事のようです。

ずば抜けた人気の『鉄腕アトム』は、TVアニメ化されました。

莫大な費用を伴うアニメーションで、毎週30分番組を作るのは不可能と言われていましたが、手塚先生のアイデアを加えたリミテッド・アニメーションにより実現されました。

製作者側の苦労は並大抵ではなかったようですが、『鉄腕アトム』は世界中に輸出され、今に続くジャパン・アニメの第一号になりました。

さらに、アニメで爆発した人気によって、キャラクター商品が日本に生まれました。

手塚先生は、最初は宣伝料を支払わなければならないのではないか、と思ったほど当時日本には版権という考えがなかったようです。

出版界を超えて、これ程までに世の中に影響を与えた作品は見当たらないのではないかと思います。

そして何より、アトムの可愛いさが最高です。

小学生の制服を着込んだアトムは他の生徒よりも背が小さくて、カバン持ちなどさせらています。

いじめられていると、ヒゲオヤジ先生が助けに来てくれるんですね。

日本で生まれたアトムをいつまでも大事にしたいと思います。