ドホナーニという指揮者は日本でももっと評価されていいのではないか?このマーラーの第6交響曲と新ウィーン楽派の2曲を収めたCDを聴いてそんな思いを強くした。マーラーの第6交響曲は大変な傑作であるが、複雑な曲でもある。例えば1楽章、2楽章はともにイ短調で、それが4拍子から3拍子へと変るので不気味な怪異性が強調される独特の効果を放つ。これを嫌って2,3楽章を入れかえる指揮者もいるほど。(実際マーラーもこの楽章の順序には相当悩んだようだ)加えて巨大な編成がある。確かに声楽を含まない4楽章構成はスタイリッシュだ。しかしオケの規模に目をやれば・・・とにかく打楽器群の陣容が凄まじい。2組のティンパニ、大太鼓、小太鼓、シンバル、トライアングル、タム・タム、グロッケンシュピール、シロフォーン、むち、ハンマー、ヘルデングロッケン(カウベルとも呼ばれ家畜用の鈴)、ティーフェス、グロッケンゲロイテ(低音の鈴、鐘に近い)、チェレスタ(できれば2台、またはそれ以上)。いったい何をやるのだ?という感じだ。そして終楽章のとてつもなく大きな展開部。2度打ち鳴らされる慟哭のハンマー!この曲が「悲劇的」と称される所以だ。ところで、このドホナーニ盤だが、一聴してパーカッションや弦楽器のきわめて瑞々しい鮮明な響きに驚かされる。オケの距離感がきわめて適切に再現されており、理想的な録音である。そして1楽章開始とともに鋼鉄の意志でひたすら終結部にむけてしっかりとした足取りで進んで行く。決して乱れることなく整然と、どのような音楽的技術的障害もものともせず突き破りるその凄まじい中央突破力に圧倒される。しかも知的だ。マーラー好みの4度や6度の音程の飛躍や第1楽章第1主題のあとで管によって奏される長3和音から短3和音への進行をその後も巧みにさばき続ける。鮮やかな手腕と言うほかない。併録されたシェーンベルクの作品は12音音楽への転轍期に作られた重要作。新たな形式と表現の融合が試みられる。またヴェーベルンの作品は初期の管弦楽のための描写音楽といってよく、ロマン派の影を色濃く残している。