《ブルガリア》ブルガリアン・ヴォイス RITUAL (CD)

合唱作品の作曲家で編曲家のフィリップ・クーテフが創設したブルガリア国立放送合唱団による合唱と演奏が18曲収められていました。指揮のドラ・フリストヴァはクーテフのお弟子さんにあたります。1994年7月にブルガリアの首都ソフィアで収録したアルバムの再発売です。1曲1曲は比較的短く、アジア的とでも表現するのでしょうか、話し声を歌唱にしたようで、日本の民謡の発声との相似は昔から指摘されてきたところです。もう30数年前になりますが、同種の音楽を初めて聴いた時、ベルカント唱法(西洋式の発声方法)とは全く違う所謂地声による合唱を聴いてビックリしたことがあります。既成のクラシック音楽の発声法とは全く違いましたからまさしくカルチャーショックを受けました。曲もそうで、日本のわらべ歌や民謡に似ている旋律があるのもアジアと地理的にも文化的にも接しているブルガリアならではなのでしょう。24人の女声合唱の織なすハーモニーは、どこか素朴でユニゾンとハーモニーの掛け合いのような曲が多いのが特徴です。冒頭の「美しいミルカ」は応答歌の形式をとっており、中央アジアの音楽との親和性も感じているところです。どの曲もそうですが、2声や3声によって作られる長2度という密接した和声はよく響きあい、人間の声がもたらす表現の幅に感心したことを思い出しています。手拍子も入り、楽器伴奏もア・カペラだけの曲に変化をもたらします。力強く、人の温かさがストレートに伝わる合唱で、ブルガリアン・ヴォイスが世界でも珍しい存在だと知ったのはずっと後になって世界の音楽をしっかりと聴くようになってからでした。