溝口監督の作品を時間順に紹介(静止画が多い)しつつ、新藤監督による関係者へのインタビューを織り交ぜたドキュメンタリー。プライヴェート・フィルム(欧州旅行)やNHK放送での肉声も見聞きできる。語りのプロではない新藤監督自身の語りと解説文で進行する150分だが、溝口監督とその作品、日本映画史に関心がある人は必見だ。新藤監督の鋭い質問と対する回答が溝口監督の仕事の流儀や私生活を徐々に明らかにする。俳優自身が考えることを求め、台詞を変えつつリハーサルを繰り返し、完璧を求めた仕事での厳しさと、田中絹代への恋心を打ち明けられなかったシャイな性格との落差、下層階級の女性を描くのは得意だが、知らない世界の作品の演出では右往左往する姿等。既に鬼籍に入られた方が多いので、貴重な証言集だ。降板事件に触れられての入江たか子の反応、そして田中絹代の、恋愛感情に関する堂々たる受答えがハイライトだろう。75年公開の作品。新藤監督も若い。溝口監督ゆかりの地を探訪した東京と京都の街の映像記録でもある。オーディオ・コメンタリーは佐藤忠男氏と新藤監督の対談。