ディラネスク (CD)

ブライアン・フェリーのディラン好きは誰しも認めるところで、私もソロ第1作冒頭の無茶苦茶にかっこいいアレンジの「はげしい雨が降る」以来、彼流のディラン解釈がしびれるほど好きだった。その彼が遂に全曲ディランの作品を出すに至ったことは、昨年のディランの「モダン・タイムズ」の成功等のディラン・ブームが影響しているのではと推測するが、フェリーとディラン双方のファンにとってはある意味30年近く待望していた作品が実現したのは実に嬉しい。本作と同じコンセプトのライヴDVDも近く発売され、こちらも楽しみだ。しかし、本作に関しては、選曲に意外性が乏しく、またアレンジもこれまで彼のディランの曲のカバーに慣れ親しんだ者にとっては、予測の範囲内の感を持つ。全曲よくできているけれども、ずば抜けたこの1曲というのがない。敢えて選べば、「時代は変る」だろうか。そして彼の声。昨年同じように5年ぶりに新作を出したディランの声が年齢を感じさせつつも、渋さと迫力を増しているのに対し、フェリーの近年の作品での彼の声は、確かに本作の帯の宣伝文句のように深みを増していると言えるが、同時にか細さも感じる。のりのよいアレンジの曲では分厚いバックの演奏に負けていないか。とはいうものの、枯れた味わいも捨て難く、何よりアレンジ・演奏のかっこよさは本作を繰り返し聴きたくさせるのも事実。それでも、例えば80年代に本作のような企画が実現していたらと思うのは私だけだろうか。