今迄の作風から上野顕太郎さんを超然としたギャグ漫画製作マシーンの様な方だと勝手に想像していたが、本書を読んで喜怒哀楽も有り、愛する家族を持った普通の人で有る事が解った。 それにしても数年前の妻の急死をテーマに綴られたこの自伝作品はネタに行き詰ったギャグ漫画家が私生活を切売りして延命する類の下品さとは無縁の内容で、身を切られる様な喪失感とその再生を作者が描かずには居られなかった心情が強く感じられる。 途中数ケ所ギャグ漫画家らしいくすぐりもあるが、逆に動揺を隠すための痛々しい行為に見える程だ。 身内の不幸が有っても人を笑わす作業を続けなければならない職業(当時、氏の連載作を読んでいて一コマ位しか氏の私生活の問題を匂わせるセリフは登場しなかった)の辛さも、多くの自伝漫画が避けて通る作者の性生活も直截に語られている。特に後者は色気も何も無く肉体的な喪失感を露わにするばかりで壮絶であった。 読んでいて非常に辛いが、身近な者を失った事が有る方には共感出来る点が多々有る作品。 しかし今迄の様に上野氏のギャグ漫画を読んでも笑えなくなりそうだ。これも時間が解決してくれるであろうが。 描き上げた作者はもちろん連載を決定し単行本にまでまとめた出版社にも脱帽である。