「科学技術大国」中国の真実 (講談社現代新書) (新書)

 本書は、科学技術、外交、経済・経営など多様な分野について経験・知見をもつ著者が、中国大使館書記官として現地で活動して得た知識をもとに書かれています。

 この本を読むと、もともと宇宙や核など一定の分野で世界的レベルだった中国の科学技術が、近年は多くの分野において急激に伸張し、先進諸国に肩を並べつつあるまでにレベルアップしてきたことがよくわかります。

 私にとって、たとえば、次のような記述は非常に興味深いものでした。

(a) アメリカ等の大学への留学者が日本とは比較にならないほど多人数となっている。

先進国の知識・ノウハウを身につけた研究者が帰国することで、人材の大交流が起き、研究レベルが向上してきている。

(b) 膨大な人口をもっているが故にその一定割合が優秀だとしても、優秀層の人口は巨大である。

特にバイオ分野のように多くの研究者が必要な分野は中国が高い実績をあげつつある。

(c) 宇宙分野のように巨額の資金が必要が必要でリスクの大きい分野は、トップダウンで強力な意思決定が必要。

その面でボトムアップの日本より、トップダウンの中国は有利。

また、ヒーローを支持する中国の国民性も有利に働いている。

(d) 中国では、科学研究に非常に多額の資金が供給されており、研究設備などは有り余るほどの状況になっている。

反面、日本は予算が伸びていない。

 このように中国の成長を記述する一方で、著者は中国の科学技術の弱い部分もきちんと解説しています。

 そして、いま、日本と中国はパートナーとして、強み・弱みを補い合えるウイン・ウインの関係を構築できる状況にあると言います。

 私自身は、中国人の国民性や反日感情などから「日本人と中国人が本当にパートナーとしてやっていけるのか」と懐疑的な気持ちもありますが、それでもこの本はとても有益な本と感じました。

 中国の現状がわかるだけでなく、日本は今後どうあるべきかを考えさせる本です。

また、記述は平明で、興味深い記述が随所にあります。

 お勧めできる良書と思います。