ヒートアイランド (文春文庫) (文庫)

「君たちに明日はない」で初めて著者の作品に触れて、奥田英朗の方がおもしろいと思った。

余計で陳腐な表現の性描写も多くあまり好きになれなかった。

だけど、きっと実力はあるのだろうなとも思ったので、傑作とされる「ワイルドソウル」を読んでみたのだが、評判どおり傑作だった。

時間を忘れ徹夜で読み切った。

で、次に手に取ったのがこの「ヒートアイランド」だ。

登場人物が男しかいない。

濡れ場(笑)もない。

笑いやくすぐりの要素がまったくない。

暴力だけが渦巻く小説だ。

解説の大沢在昌氏が「多くの女性には理解されにくい物語世界」と書いているとおりだと思う。

ストーリーや登場人物に“新しい”魅力を感じるかといえば疑問符がつく。

多少複雑ではあるがストーリーはこういった作品の典型だ。

同じく、アキやカオルも含めた登場人物もこういった作品の典型だと思う。

正反対の二人がコンビを組むという手法も新しくない。

しかし、それでもこの作品は面白かった。

それはひとえに、一気に読ませる構成力とスピーディな展開なのだと思う。

こういった作品で大事なのは、読者に本を閉じる暇を与えないリーダビリティの高さだ。

いわゆるハードボイルドと呼ばれる、人物の造形などに“ある程度“パターンの決まった”ジャンルの小説で、これだけの作品を書き上げた著者の実力はやはり高い。

この作品はデビュー2作目なので、結果的に遡って彼の作品を読んだことになった(まだ3作だが)が、感じるのは、垣根涼介はハードボイルド的な作家として登場したものの、それには飽き足らず(あるいは限界を感じて)、「ワイルドソウル」のような、人物造形に力を入れハードなだけではない奥行きのある、彼にとって一つの頂点ともいえる作品を書き上げ、そして「君たちに明日はない」のようにキャラが立った小説にシフトしようとするも、それがまだ試行錯誤の段階であるということだ。