高橋洋子さんの多様な魅力が伝わってくるアルバムでしょう。リーフレットには歌詞しかなく解説がありません。不親切な編集と言えます。彼女の名声を高めた「残酷な天使のテーゼ(REMIX FOR PEACE)」と「魂のルフラン(REMIX FOR PEACE)」の何れも福岡ユタカさん編曲により、オリジナルの壮大な曲想や哀愁と言ったものが減じられているようでそれが不満です。オリジナル音源のまま収録できなかったのでしょうか。「ゴールデン ベスト」という歌い文句とリミックス・ヴァージョンは少し相容れない様に感じました。高橋さんの魅力は豊かな高音の伸びにありますが、発音の明確さ、子音や母音の発音の美しさも特筆すべきでしょう。「$1,000,000の恋」のようなアップテンポの曲では歌詞が立ち、明瞭にリスナーに伝わってきます。一方来生えつこ作詞、来生たかお作曲の静かなバラード「浅い夢」では歌詞のイメージが豊かに感じられます。メランコリーな気分が感じられる曲での感情移入も確かで、高橋さんの巧さが伝わってきます。『新世紀エヴァンゲリオン』の大ヒットで有名ですが、実力ある歌手なのはこのような何気ない曲をどのように歌うかで評価が定まるでしょう。見事な歌唱でした。シンガー・ソング・ライターとしての実力が感じられる「9月の卒業」も良い曲ですね。青春の1ページとでもいうべき思いと懐かしさが詰まっています。「もう一度逢いたくて」のようにセンチメンタルの雰囲気の曲を歌わせると絶品ですね。「残酷な天使のテーゼ」「魂のルフラン」だけでなく、このような曲をしっかりと魅力的に歌える歌手だという評価の確立がもっと必要でしょう。久保田利伸や松任谷由実のバック・コーラスも努められたそうですが、その経歴は伊達ではありません。そう思いました。