Wac Double Features: Big Hearted Herbert/Merry Fri [DVD] [Import] (DVD)

20年代のブロードウェイで、実力派舞台女優として成功を収め、30年代(すでに30歳を超えていた)からは映画にその活躍の場を移したアリーン・マクマホン。

「眠たげで悲しい目をした」女優と称され、ワーナーの『特輯社会面』や『ゴールド・ディガーズ』などの準主役として印象を残したが、34年に、彼女が肝っ玉が据わった母親を演じたホーム・コメディの中編"Big Hearted Herbert"と"The Merry Frinks”を(ともに日本劇場未公開)収めた2枚組DVD-R。

40年代以降、彼女が度々演じることになる母親役の嚆矢的作品だ。

●"Big Hearted Herbert"配管業からビジネスマンとして大成したハーバート・カルネス(ガイ・キービー)。

カルネス家では、彼が口やかましく暴君のように振る舞い、妻であるエリザベス(アリーン・マクマホン)以下、家族は戦々恐々としている。

そんなある日、娘のアリス(パトリシア・エリス)が、婚約者アンドリュー・グッドリッチ(フィリップ・リード)と彼の両親を夕食に招くが、ハーバートはグッドリッチ一家を侮辱し、追い帰してしまう。

ついに我慢の限界を超えたエリザベスはある行動に出る…。

ソフィー・カーとアンナ・スティース・リチャードソンによるブロードウェイ舞台劇の映画化作品。

ワーナーの御用監督であるウィリアム・キーリーが、ほぼカルネス家で展開される話を流れるような手際の良い演出でまとめている。

キーリー監督自身、舞台出身なので、格好の題材だったのだろう。

陽気な善人役が多い("The Merry Frinks"での浮世離れした叔父役などは、その典型)キービーにしては珍しい、『破れ太鼓 [DVD]』のバンツマのような頑固な暴君ぶりが可笑しく、作品を引張っている。

その大きな駄々っ子のような夫を、寛容な心で、しかしきちんと手綱を引いて操る賢妻ぶりが、いかにもマクマホンらしい。

生活人らしいやつれや哀感の中に、ふとみせる美しい表情が印象的だ。

年増の魅力全開といったところ。

●"The Merry Frinks"狭いアパートに家族6人で暮らすフリンク家。

一家は、各人てんでばらばらの性格で、好き勝手に行動している。

相手を思いやる気持ちを全く持たない一家を、辛うじてまとめているのが、妻であり、母親のハッティ(アリーン・マクマホン)。

夫のジョー(ヒュー・ハーバート)が失業すれば、雇い主に頼み込んで再雇用をお願いしたりする甲斐甲斐しさだ。

そんな折、ニュージーランドでの放浪生活から戻ったニュート叔父(ガイ・キービー)が、フリンク家に居候するようになり…。

サイレント期からのベテラン監督、アルフレッド・E・グリーン監督(『ジョルスン物語 [DVD]』などが有名)によるスピーディで狂騒的なホーム・コメディ小品。

ヒュー・ハーバート、ガイ・キービー、アレン・ジェンキンスといったクセモノ俳優たち演じる奇人たちが、入れ替わり立ち替わり出入りするのが(本作も、ほぼ狭いアパート内で話が展開する)、姦しくも面白い。

マクマホンは、本作でも、生活人の逞しさと美しさが同居した役柄を好演。

後半、上流生活を始め、前半の質素極まりない服装から、華美なドレス姿を披露する対照も鮮やかで、彼女の艶っぽい一面も引き出されていて素晴らしい。

本DVD-Rは、米Warner Archiveによるオン・デマンド・DVD-R。

レストアはされていないので、キズなどが所々あるが、白黒の諧調も、ディテール表現も、製作年を考えれば十分すぎる画質。

音声も明瞭。

基本、本編のみのWarnerArchiveシリーズにしては珍しく、各作品の予告編が収録されているのも嬉しい。

特に、"Big Hearted Herbart"の予告では、当時のワーナーのスターたち(アン・ドヴォラク、ジェームズ・キャグニー、ディック・パウエル…など)の推薦も含まれていて興味深い。

北米盤ながら、R-0(=All)なので、日本のR-2 プレーヤー で視聴可能。

例によって、英語字幕は未収録だが(ただし、英語は平易)、まず日本盤が発売される可能性はない作品なので、映画ファンにはたまらないセットのはず。

当然、星5つ。