Groovin’Blue (CD)

ポップ・ミュージックの理想系とも言える非常に質の高い作品。何枚目のオリジナルアルバムになるのかは、多すぎて分からないけれど、歌手としては、アイドルだった時代から、少しづつ脱皮し自分のボーカルを生かす歌唱法をマスターしてきた彼女だが、ついにこの作品では、音の醸しだす雰囲気、曖昧さの中にもその空気を確かにイメージできる歌詞、そして気負いのないさりげないボーカルの全てが渾然一体となって、かつてない完成度を誇っている。しかも、それらが完全に意図的にできあがったとは思えないところも魅力的だ。この少し前の彼女の歌には、ナチュラルさを意識しすぎていたきらいがあり、それがむしろナチュラルさを欠くところがあったと感じる。岩井俊二の映画「ラブレター」のなかでの中山美穂が、とても魅力だった。一人二役に挑んだ中山美穂が、好対照とも言える二人の女性を演じたのだが、北海道に住むおっちょこちょいで、はにかみ屋の樹という役柄が非常にはまっていて、こういう素朴な一面も出せる女優だったんだと感心させられた。このアルバムでもそういういろんな表情を、自身が書いた歌詞によって、ごく自然な体で表現できているように思う。アルバム中でも、最もヒットを狙えそうにないM8"マーチカラー"をシングルで切ったきたのも、あまり売り上げなどを気にせずに制作できる状況であったということだろう。そして、作曲陣だが、上田知華、内藤慎也を中心に13曲で8人のコンポーザーを起用しながら、バランスを崩すような曲やアレンジは一切なく、ジャケットの森林に佇む姿を思わせる静謐な統一感が貫かれている。それぞれの曲も控えめながら、よく練られており、無駄なものはそぎ落とした感じで、マイナスイオンに包まれているような気分になれる。