ぼくもいくさに征くのだけれど―竹内浩三の詩と死 (単行本)

 伊勢市出身の竹内浩三は23歳で戦死しますが、彼が生前書き残した数々の詩は戦後多くの人々をひきつけていきます。職業詩人であったことはない浩三の作品群はやがて様々な人々の手を介して書物の形で世に出ることになります。本書「ぼくもいくさに征くのだけれど」は、そうした書と出会った若き著者が、あらためて竹内浩三の足跡を辿ることによって戦争に対する思いを綴った一冊です。 先月(2005年4月)、本書は大宅壮一ノンフィクション賞を史上最年少で受賞しました。その筆遣いは20代前半という年齢を感じさせぬほどの練達ぶり。ライターとしての技量は母親(ノンフィクション作家の久田恵)譲りなのでしょうか。 浩三は、「骨のうたふ」という詩の中でこんな風に綴っています。「がらがらどんどんと事務と常識が流れ 故国は発展にいそがしかった 女は 化粧にいそがしかった」 戦時中に書かれたとは思えぬほど、戦後の日本を見透かしたかのような一節です。その眼力にまず驚かされます。 出征する兵士を町ぐるみで「祝い」、「撤退」を「転進」と言いつくろう、そんな時代にあって、浩三は別の詩でこうも書きます。「そんなまぬけなぼくなので どうか人なみにいくさができますよう」 拳を振り上げて力強く反戦を言い募るでもなく、混沌とした時代に一人の青年として大きな不安を抱えていることを、浩三は素直に文字にしていきます。 浩三の詩を初めて全国に紹介した本の編集にあたった人物がこう語る言葉に胸を衝かれました。 「私たちの世代の二十歳までの間はね、ちょっと格好をつけて言えば、すべて自分以外の目的のために生きるということが当たり前だったんです」(169頁)。 そのことの善悪は別として、そういう時代が60年前にあった。そのことがなにやらとても不思議と遠く感じられる今に生きていることを改めて考えました。