ジル・ブラース物語 1 (岩波文庫 赤 520-1) (文庫)

 田舎出の主人公ジル・ブラースが様々な事件に遭遇し、その度にあれやこれやと境遇が変わり、色々な主人に仕えて辛い目や怖い目にも遭ったりするが最終的に恵まれた老年を迎えるまでを、リズムの良い喜劇調で語る堂々たる巨編。

舞台がスペインであることも有り、ピカレスク・ロマンと紹介されることも有る様だが、確かに盗賊に誘拐されてその仲間に成ったり、医者としてせっせと患者殺しに精を出したり、出世して賄賂を取ったりすることも有るが、ジル・ブラースは基本的に愚直で善良な好人物であり、悪いことをしたら素直に反省し、悪漢とは呼び難い。

後半からは立身出世物語の様になるが、自らの努力によってと云うよりは寧ろ多分に巡り合わせの良さによるものであり、読んで為に成るかと言うとそうでもない。

時々あちこちに脱線して別の話が挿入されるので、メニッペアン・サタイアのひとつと言えなくもない。

訳者が巻頭で紹介している通り、18世紀当時の風俗小説として読むのが正しいのかも知れない。

何はともあれ、訳文の古さにも関わらず(時々漢和辞典が必要になるだろう)読んでいて理屈抜きで滅法面白い。

殆ど版を重ねていないらしいのが信じられない。